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026/Repair・・・Dining Chair組み直し編

 今回のブログは旅ではなく、本業のお話しです・・・当「Fusion Interiors」の取り扱う家具のカテゴリーは「Modern Furniture」で、1960年代~70年代がメインになります。「たまたま」北欧、特にデンマークが多いのですが、これは私が好きな木工であること、モダンエイジのデザインが好きなこと、そして何より、造りが良く修理がし易いことがあり、自然とデンマークの家具が多くなってきたということに起因しています。デンマークの家具は、後々の修理の事を考えて作られていますので、きちんとした修理を行えば、何世代にも渡って使い続けることができるものなのです・・・が、最近、この「きちんとした」修理もされずに売られていることが多く、その分、修理依頼も沢山きます・・・よくあるのが、椅子の「ぐらつき」なので、その工程と工具、方法などなどについて、家具屋らしく書いてみようかと思い立ったわけで・・・

 

 まず、一般の方に注意してほしいのが・・・というより、絶対にやって欲しくないことが、外れかかっている個所の隙間から接着剤を入れて修理することです・・・これをやられると、直せるものも直せなくなることが・・・そもそも、隙間から入れただけでは付かないということを知って欲しいです。組んである内部の古い接着剤(にかわ等)を綺麗に取り除かないと水性のボンドははじかれてしまい、くっつかないです。逆に中途半端にくっついて、取り外すときに厄介になることがあります・・・ここは最初からプロに任せて下さい!

 

 今回ご紹介するダイニングチェアーは、おそらく日本かイギリスの70年代の椅子です。シートハイが低いので北欧では無さそうですが・・・素材は「アフリカンチーク」かと・・・違ったらゴメンなさい・・・とにかく綺麗な木目の深い色合いの木です。ちなみにアフリカンチーク(正式にはアフロモジア)は名前こそ「チーク」ですが、アフリカ産のマメ科の木材でチークでは無いです。しかし、木目がチークっぽく、非常に美しいです。現在ではワシントン条約で輸出入禁止になっています。(アフリカ産の木材はほとんどそうです)香りもローズウッドやマホガニーに似て、甘く深い香りがします!(木材の臭いフェチなもので・・・)正直、私は素人でリペアを始め、18年間試行錯誤しながら「独学」でやってきて、最近、非常に親切で知識豊富な木材屋さんとお友達になってから、チークやオーク、ローズウッド(北欧で良く使われる木材=全部輸入品。デンマークは山が無いので木材はほとんどとれません!)以外は知らなかったくらいです・・・で、お預かりした椅子がこれです・・・

 

一見、綺麗ですが、古いオイルの上にワックスが何層にも塗られべたつきが有ります

 

ジョイントは全て外れかかっています

 

背中など良く手に触れる部分はオイルも剥がれています・・・

 

 まずはジョイントを全てはずしてバラバラにしていきます。工具はハンマーとクランプを逆向きにして「ジャッキ」みたいにして少しずつ隙間を広げます。慣れていない人だと、脚を折ったり、中のダボを折ったり、傷つけたりします・・・ポイントは少しずつ。上に隙間が出来たら薄い木材を入れて、下側を外す・・・そんな繰り返しです。

 

バラバラ・・・上下左右を間違えないようにマーキング

一心不乱にやっているとマーキングを忘れることが・・・

 

今回は2脚のお預かり・・・少しずつ丁寧に・・・

 

ジョイント部分

今回の物は「ダボ」でした

この部分、オス・メス両方を綺麗にするのがポイントです

 

 バラバラにしたら古い塗装を剥がしてサンディングしていきます。古いオイルやワックスを剥がすにはいくつか方法があり、中性洗剤や木工用ソープでやる場合と塗料を剥がす「剥離剤」を使う方法が・・・確実に綺麗にとるには「剥離剤」が早くて綺麗です。また「ウレタン塗装」などの「強い」塗料の場合はヒートガンで温めながら剥がすので、大変です・・・電気代も凄いし・・・ここを丁寧にやれば、その後のサンディングが楽です。

 

剥離剤で古いオイルを剥がし「素」の状態に・・・

 

 この状態でサンディングを3パターン行います。まず、粗削りで180番手のサンディングペーパーを使用してがっつりサンディング。やり過ぎると形が変わるので、ここの加減が経験でしか分からない所です。粗削りが終わったら傷を消すのに240番手を使用して丁寧にサンディングしていきます。

 

左が剥離後で、右が240番まで当てたもの

この時点でもかなり滑らかになっていますが、まだまだです・・・

 

 240番まで当てたら、組み直しに掛かります。番手240は、かなり綺麗になるのですが、表面にざらつきがまだまだあるので、もっと細かい番手で仕上げていくのですが、組み直し時に傷がついたり、接着剤をふき取るときに、水拭きをして毛羽立つので、組み終わってから仕上げサンディングを行います。

 

 組み直しの際、冒頭でお話しした「古い接着剤除去」を丁寧に行います。私の場合はカッターとノミ、ドリルを使って接着剤だけを丁寧に取り除いていきます。ここで無理な体制で刃物を入れたりするので、ケガすることが多いです・・・私の右手は50針以上縫ってます・・・綺麗に除去したら、ダボ(オス)部分をバイス(ペンチみたいな・・・)でつぶしていきます。「木殺し」といって、つぶすことで水性のボンドが染み込みやすく、更に組んだ時に、中で木材が膨張し、ボンドが固まるので強度が増します。組む際もまっすぐ歪みが出ないように注意します。以前、力任せに組んで、あばらを折ったことが・・・

 

はたがね、クランプ、ラッシングベルトを用いて固定していきます

中央が私が最も使う工具「プロ用カッター」とバイス

職人は「プロ用」という言葉に弱い・・・笑

 

右ビフォー、左途中・・・

 

このごつい金属の物が「ハタガネ」です

ハタガネにもいろんな種類があって、強度が違います

家具職人しか使わないので高いです・・・

赤いベルトは荷物を縛るラッシングベルトですが、運送屋さんが使うのとは少し違います

 

アメリカ製のクランプ!これ使い易いです!

多少の角度でも食いつくし、物凄く強い締め付けです!

頭を逆に付けると「締め付け」ではなく「広げ」ることが

 

一晩おいて固定具を外しました

 

組み終わったら仕上げサンディング

 

 組む前に240番手までサンディングしていましたが、もう一度240番手でやり直します。組んだ後はジョイント部分の際が面倒になります・・・木目に沿ってやらないと、キズが付き、非常に目立ってしまいます。240番手は丁寧に・・・その後、320番手で更に細かくサンディング・・・さらにさらに、最後は600番手で艶を出します。600番手以上でやることで、オイルの乗りが全然違ってきます。

 

 サンディングが終わったら、オイルで仕上げます。このオイルもお店によって種類や塗り方が違ってきますが、私はマットな感じが好きなので、あっさりとした仕上げにしていきます。ここで注意が・・・今回のような背もたれが木材の場合、オイルの種類や塗り方によっては、洋服に色移りすることがあります・・・北欧やヨーロッパ、アメリカと違って、アジア、特に島国日本は、気温や湿度の上下が幅広く、木材やオイルにとっては過酷な気候条件なのです・・・これは、どのオイルが良く、どういう塗り方が良いとここで説明するのは難しいので、是非、ご来店して、体験してみて下さい・・・

 

仕上がり

ここまで5~7日間・・・

 

 単純に組み直すだけでしたら、サンディングや仕上げの工程はいらないのですが、接着剤を除去する際に、どうしても水で拭き取り、その際に古いオイルなどが剥がれムラになってしまいます・・・どうしても、私はそれが許せない・・・せっかくバラすなら、本来の美しさに戻してあげたい・・・キズや汚れを思い出として残したい方は、当店には頼まない方が・・・徹底的に綺麗にしてしまうので・・・で、せっかくなら、良い生地で張り替えて、中の座面素材も良い物を使って、次の世代に残してあげませんか・・・というブログでした。

 

 初めて家具屋らしいブログを書きましたが、たまには奥深い家具の話しも良いかなと・・・これを読んで、良い家具と良いお店を見つけるきっかけになればと思っています!